相談:売買代金請求権、貸金返還請求権、損害賠償請求権等の権利を
   有している者は、債務者に対して請求書を何度も郵送し続けて
   いるだけで、権利が消滅時効にかからないために十分な措置を
   していることになるのでしょうか。

回答:ときどき、実際の法律相談で、請求書を毎月送っているから
   時効にかからないと勘違いされている相談者の方をお見受けします。
   しかし、実際には、請求書を毎月送っているだけだと
   時効にかかってしまいます。
   
   例えば、「生産者、卸売商人又は小売商人が売却した産物又は
   商品の代価に係る債権」は、時効期間が2年ですので(民法173条1号)、
   上記のような勘違いは、時として権利を失うことにつながりかねません。

   
   確かに、民法147条は、時効は請求によって中断すると定めていますが、
   他方で、同法153条は、
   「催告は、6箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、
   民事調停法若しくは家事事件手続法による調停の申立て、破産手続参加、
   再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、
   時効の中断の効力を生じない。」と定めており、
   同法147条で時効の中断が生じる「請求」とは、裁判所を通じた
   手続のものに限られるからです。
   

   事例を設定してお話します。

   平成25年7月31日の経過をもって時効期間が満了する権利があるとします。

   同日までに債務者に到達するよう配達証明付き内容証明郵便で請求します。
   時効期間内に催告したことを証拠化するためです。
   ただ、実際には、債務者が不在のときに時効中断の効力が発生するか、
   いつ発生するかの問題がありますので、このような手法をとるのは、
   時効期間満了前までに確実に到達する場合でなければなりません。
   そして、到達したとき(平成25年7月31日とは限りません。)
   から6か月以内に裁判所に訴状を提出するのです。