相談:先日、私は、歩行者用信号機の青色表示に従って横断歩道を歩行中、
交差点を右折して横断歩道を通過しようとした
自動車に衝突され、傷害を負いました。
衝突した自動車は、ある保険会社の任意保険に入っています。
治療費の請求については、どのような流れになりますか。
また、治療費の支払をめぐって今後発生する可能性のある問題と
しては、どのようなものがありますか。
回答:加害者が運転していた自動車が任意保険に入っている場合には、
保険会社が、直接、病院等の医療機関に治療費を支払います。
保険会社が治療費を支払うにあたって、保険会社は、あなたに対し、
あなたの傷病についての情報を直接医療機関から入手することに
ついての同意書に、あなたの署名押印を求めてくると思いますが、
それは、保険会社が、かかった治療費が交通事故による傷病に対し
必要かつ相当なものであるかをチェックするためのものですので、
そこで保険会社とトラブルになるのは得策ではなく、
スムーズに治療費を支払ってもらえるよう、
同意書への署名押印は原則として応じた方がよいと思います。
問題は、治療費が支払われるのは、症状固定時期、すなわち、
それ以上治療を継続しても医学的効果が期待できない時期までで
あることです。よくあるのは、あなたと保険会社とで症状固定時期に
ついて意見の食い違いが生じ、保険会社が医療機関に対する
治療費の支払を打ち切ってくることです。
このような場合、あなたは、自ら治療費を支払って治療を継続
したうえで、後に裁判で症状固定時期があなたの考えるときまでで
あることを証明する必要があるでしょう。
ここで大事なことは、自ら治療費を支払う場合、健康保険による
治療に切り替えることです。
保険会社が医療機関に治療費を支払う場合、自由診療と言って、
健康保険による治療ではないことが通常です。
自由診療と健康保険診療との大きな違いは、同じ治療内容でも
健康保険診療の方が自由診療よりも安価であることです
(多くの場合、健康保険診療は自由診療の5割安)。
しかも、健康保険診療の場合、自己負担分以外は健康保険組合が
負担してくれます(健康保険診療が自由診療の5割安で、
健康保険診療の自己負担割合が3割の場合、
「健康保険診療の自己負担分=自由診療の場合の治療費×50%×30%」
という算式が成り立ちます。)。
健康保険診療に切り替えなければ、もし、あなたが、自分の考える
症状固定時期の証明に成功しなかった場合、あなたに、
健康保険診療に切り替えたときよりも経済的損失を生じることになります。
医療機関の中には、「交通事故の場合には、健康保険が使えない。」という
説明を行うところが見受けられますが、それは誤りです。
ただし、健康保険診療に切り替える場合、あなたは、
健康保険組合に「第三者による傷病届」という書類を提出
しなければなりません。
健康保険組合が、「第三者による傷病届」が提出されたことにより、
加害者の存在を認識し、健康保険組合負担分を加害者に対し
求償請求できるようにするためです。