相談:私は、不動産、預貯金、株式・国債・投資信託などの資産を持っていますが、
将来私が亡くなったときのために、遺言書を作っておこうと考えています。
遺言書の種類として、自筆証書遺言と公正証書遺言などがあると
聞いたことがありますが、どちらの方法がお勧めでしょうか。
回答:それまでは仲の良かった家族が、
そのうちのどなたかが資産を残して亡くなった後、
その分け方をめぐって仲が悪くなってしまうということは、
残念ながら、世間において、ときどき見られることです。
いつまでも健康で生きていられることに越したことはありませんが、
人は限りある存在であり、上記のようなことが起こらないよう、
また、そのようなことが起こらないとしても、残された家族が
遺産の分け方を話し合わなければならないということ自体負担と
考えられますので、遺言書を作っておくことは、
賢い選択であると考えます。
遺言書の種類としては、自筆証書遺言や公正証書遺言などがありますが、
私(=弁護士森亮爾)は、公証人の手数料がかかったとしても、
絶対に公正証書遺言の方をお勧めします。
自筆証書遺言は、
遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、
これに印を押さなければならないとされており(民法968条1項)、
パソコン入力後プリンターで印刷した遺言書は、無効となります。
また、「平成27年1月」とだけ記載された遺言書も、
日付の記載が不完全であり、無効となってしまいます
(最高裁判所昭和52年11月29日判決)。
また、自筆証書遺言における加除その他の変更は、
遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して
特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、
その効力を生じないとされており(民法968条2項)、
変更の方法も厳格に決められていて、
それを間違えてしまう危険があります。
さらに、自筆証書遺言の場合は、プロが作成に関与することが
少ないため、遺言の内容がはっきりせず、遺言の解釈をめぐって
争いとなることが少なくありません。
その他、紛失や、相続開始後の利害関係人による隠匿など
といった難点が指摘されています。
これに対し、公正証書遺言は、
公証役場で執務する公証人という公務員が作成する公文書であり、
遺言が無効となってしまうことは、まずなく、
原本は公証人が保管するため、紛失や隠匿の問題も生じません。
ただし、公正証書遺言の場合、
証人2人以上の立ち会いが必要であり(民法969条1号)、
遺言をしたことを秘密にしたくても、証人には知られてしまいます。
なお、
(1)未成年者
(2)推定相続人(仮に遺言時に相続が開始したとしたら第1順位で相続人となるもの)、
受遺者(遺贈によって利益を受ける者)、
これらの者の配偶者及び直系血族など
は、証人になれません(民法974条)。
当事務所では、遺言書の文案の作成、公証役場との連絡、
証人としての公証役場への出頭も行っており、
遺言をしたことの秘密が守られます。