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弁護士の小窓

安愚楽牧場事件(岩城)

■安愚楽牧場とは?

 安愚楽(あぐら)牧場は、昭和56年12月18日に
 「和牛の繁殖飼育事業」等の事業を目的として、
 「有限会社安愚楽共済牧場」として設立された会社です。
 安愚楽牧場は、支払不能に陥ったとして、
 平成23年8月9日、東京地方裁判所に民事再生手続の開始を
 申し立てて実質破綻しました。
 被害者数は約7万3000人、被害額は4200億円超という
 わが国史上最大の消費者事件です。
 現在、安愚楽牧場の代表取締役であった三ヶ尻久美子氏や
 その他の取締役も破産手続中であり、
 刑事事件としても立件されています。

■安愚楽牧場が行っていた商法〜和牛預託商法〜

 安愚楽牧場は、「和牛預託商法」を行っていました。
 和牛預託商法とは、概ね次のとおりの事業です。

 投資者(出資者)が、業者より、肉用和牛の子牛を購入する。
  ↓
 購入した子牛は、投資者より業者に預託し、飼育を委託する。
  ↓
 牛が成長したところで、業者は、投資者より牛を買い戻す。
  ↓
 業者は、牛を市場で売却する。
  ↓
 投資者の子牛の購入価額と、売却価格から育成経費を引いた分との
 差が利益となって、投資者に還元される。

 また、子牛でなく、子牛を産む繁殖牛について、
 同様に売買・飼育預託を組み合わせる場合もあります。
 安愚楽牧場は、繁殖牛について投資対象としていました。

■和牛預託商法の問題点

 和牛預託商法は、一見、リスクのない投資商品に見えるのですが、
 ビジネスモデルとして無理がありました。

 まず、牛が必ず高価格で販売できるとは限りません。
 高価格で販売するには高い飼育技術が必要で、低品質の成牛しか
 飼育できないことがあります。
 もし高品質の成牛の飼育に成功したとしても、
 売却時の市場価格が、当初の想定を下回ることもあります。

 また、飼育期間を通じて、飼料代がかかりますが、その飼料の
 市場価格は一定ではありません。
 繁殖牛に投資する場合も、
 その牛が毎年必ず子牛を産むとは限りません。
 出産しても、子牛が育たずに死亡する場合があります。

 結局、契約時の想定通りに利潤が出ることは、本来ほとんどないと
 言われており、ビジネスモデルとしては無理があったのです。

 では、どうしてこのようなビジネスモデルがまかり通ってしまったのでしょうか。

 その原因としては、投資者が牛を購入したとしても、
 投資者は実際の牛の肥育に関わらないため、自分の牛の特定を
 することが通常できないことや、
 牛の特定ができたとしても、それが他者と重複(共有)している
 ことの確認ができないことなどにあります。
 さらに言えば、投資者は自分が購入した牛が存在するのか
 どうかも確かめる術がありません。

 つまり、事業者は、契約どおりの牛を揃えることなく、契約者より
 お金だけを集め、これをそのまま他の契約者への配当金に回すことで、
 外形上和牛飼育が成功しているように見せかけることが
 容易に可能だったのです。

■安愚楽牧場の実態

 安愚楽牧場は、平成7年ころから契約の対象となる繁殖牛が
 いるように見せかけていました。
 消費者庁が安愚楽牧場破綻後に調査をした結果によれば、
 少なくとも平成19年以降は、本来いるべき頭数の半分ぐらい
 しかいませんでした。
 牛の頭数が少ないのに、オーナーが投資対象として出資できたのは、
 安愚楽牧場が架空の牛番号を付けていたからです。
 オーナーが現実の牛を確認できないことをいいことに、
 安愚楽牧場は詐欺的取引を行っていました。

 和牛商法は、構造的に毎年確実に利益を出すことができない商法です。
 安愚楽牧場は、税務申告上の損益計算書には赤字を計上していながら、
 オーナー向けの事業報告の損益計算書では毎年利益が出ていると表示していました。

 さらに、安愚楽牧場は、オーナーからの「出資」を、会計上、
 「売上」として計上していました。
 安愚楽牧場の契約では、オーナーの牛を必ず買い戻すことになって
 いましたので、会計上は、売上ではなく負債(又は預り金)として
 処理しなければなりませんでした。
 安愚楽牧場の収入に占めるオーナーからの出資の割合は70%にも
 及んでいたので、安愚楽牧場の本当の売上は、オーナー向けに
 公表していた売上の3分の1もなかったことになります。

 例えば、平成21年7月に農水省が安愚楽牧場から報告させた内容に
 よれば、平成21年3月当時にオーナーに返金しなければならなかった
 残高は、2880億円にも上っていました。
 これが負債として計上されていれば、安愚楽牧場が2800億円という
 大幅な債務超過状態で到底存続し得ない状態であることは明らかでした。

 では、どうして安愚楽牧場は事業を存続できたのでしょうか。

 安愚楽牧場は、既存のオーナーへの利子や返還金について、
 新たに獲得した新規オーナーの出資金を当てていました。
 安愚楽牧場は毎年内容虚偽の計算書類を作り、大幅な債務超過で
 ある実態を隠し続けたため、一般消費者たるオーナーは
 安愚楽牧場の事業は順調であると思い、安心して新たに契約に
 至ってしまう人が増え続けました。
 これによって安愚楽牧場が破綻するまで被害が拡大し続けたのです。

■国の責任追及

 安愚楽牧場被害対策東海弁護団は、平成26年5月30日、
 国を被告として、安愚楽牧場被害に関する国家賠償責任を追及する
 訴訟を名古屋地方裁判所に提起しました。
 また、同日、他の地域の安愚楽牧場被害対策弁護団も各地の
 地方裁判所に提訴しています。
 当地の提訴者数は200名超です。

 これまで述べてきたように、和牛預託商法は構造的に破綻が必然の
 ビジネスモデルでした。安愚楽牧場は、平成11年以降、税務申告において
 赤字申告を行っていましたが、その後も安愚楽牧場がオーナーを
 拡大すればするほど、牛を買戻すための金額が増大するため、
 オーナーの募集をひたすら続けなければならない状況だったのです。

 和牛預託商法は昭和の終わりころに登場した商法ですが、
 16あった業者が次々と破綻していきました。
 平成19年ころには業者の数は、安愚楽牧場を含めてわずか2社に
 なっており、農水省は、そのうちの1社である「ふるさと牧場」に対し、
 同年12月19日に立入検査を行いました。
 その検査で、「実際には牛の飼養が行われていなかったにもかかわらず、
 その旨を顧客に対して故意に告げず」勧誘していたこと、
 「他の顧客からの預託金(契約金)をもって支払に充てていたにも
 かかわらず、その旨を顧客に対して故意に告げず」契約の
 締結・更新の勧誘していたこと
 が判明したのです。

 まさに、今回の安愚楽牧場と同じことがふるさと牧場でも行われていました。

 農水省が「ふるさと牧場」に対し立入検査を行ったのは、
 「預託法」による規制があるためです。
 和牛預託商法を規制する預託法は、昭和60年代に発生し大きな
 社会問題となった豊田商事問題を中心としたいわゆる
 「現物まがい商法(現物がないのにあるように装って販売すること)」
 による消費者被害を防止する目的で制定されたものですが、
 和牛預託商法の会社が次々と破綻したために、農水省自ら、
 平成9年に和牛預託商法を取り締まるように法律を改正するよう
 働きかけた経緯があります。

 つまり、農水省は、和牛預託商法が容易に「現物まがい商法」に
 転化してしまうことをよく知っていました。
 そこで、遅くとも平成19年12月19日の時点で、同種営業を
 行う安愚楽牧場に関しても、販売している牛は本当に実在しているのか、
 配当に見合う利益が本当に上がっているのかについて、預託法に
 基づく立入検査等を適正に実施し、農水省に与えられた規制権限を
 適正に行使しなければならなかったのです。

 国に対する国家賠償請求訴訟は、被害者の方の損害を安愚楽牧場に
 代わり填補すべきであるという訴訟ではありません。
 和牛預託商法が容易に消費者を騙しうるビジネスモデルであるため、
 預託法は、国に対し、消費者を保護するための規制権限(立入検査や
 業務停止命令)を唯一付与しています。
 一方、消費者は和牛預託商法を行う会社が適正な事業を行って
 いるかを確認する術は全くありません。
 従って、多くの和牛預託商法を行う企業が破綻する中、
 国が適正に預託法の規制権限を行使していれば、
 安愚楽牧場の被害の拡大を防げたはずなのです。

 今回の訴訟は、国の規制権限の不行使の責任を問う訴訟です。

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